日別アーカイブ: 2015年7月4日

障害児を持ったある母親からのメール 2015.7.3

新刊案内をいろいろな方に送ったら、こんなメールが届きました。この方とメールをやり取りしていた頃を思い出して、思わず目がウルウルしました。紹介させていただきます。

「新刊発売のご案内、ありがとうございました。私のことを覚えてくださっていて本当に感謝します。ところで障害を持って生まれた下の子は、もう1歳9か月になりました。障害がわかってから、1年と半年が過ぎたことになります。

この1年半はやはり辛く、とても苦しいものでした。申し訳ないことながら、わが子をかわいいと思えず、そんな自分を責め、周りの同じくらいの子どもを見ると、うらやましくて胸が張り裂けそうでした。毎日毎日泣き、泣かない日はいつになったら来るのだろうと、真っ暗なトンネルの中にいるようでした。人生でこんなに涙を流し、自分と向き合ったことはありませんでした。

そしてだんだん卑屈になっていく自分がいました……。そうは絶対なりたくないとがんばっていたのに……。自分を責めている自分にはっと気づき、そんな自分がまた嫌になるという悪循環でした。

そんな頃、考えあぐねた末に、神渡先生にメールしました。思いもよらず、親切に応対していただき、やり取りが往復するようになりました。そしてだんだん思い直すようになりました。ひょっとすると、世の中は嫌な人ばかりではなく、障害を持つ子を差別する人ばかりではないかもしれない……。一番苦しかったときを本当に支えていただいて、ありがとうございました。

あれからいろいろな方々との出会いがありました。同じ障害を持つ子どもの母親たちです。障害を抱えた子どもを産まなければ出会わない方々でした。

私も同じ思いをしましたと親身に相談に乗ってくださったり、今の辛さをを笑いに変えられる日がきっと来ますと励ましてくださったり……。同じ苦しみを経験されている方々でしたから、そんな方々が乗り越えた末に語って下さる話は、涙なしには聞けませんでした。いろいろな方々に支えられて今の自分があると実感します。ようやくあの頃をおだやかな気持ちでふり返ることができるようになりました。

まだまだ、下の子を育てることにへこたれそうになる日もありますが、人と人がつながることのすばらしさを以前より感じられるようになりました。先生がおっしゃっていたように、人間はそんなに弱くないのかもしれないですね。最近その言葉が私を奮い立たせてくれています。

今も気にかけてくださり、出版のご案内をいただき、何とお礼をいっていいかわかりません。ぜひ読んでみます。勝手ながら、また挫けそうなときは連絡させてください」

そんなメールに私はこう返事しました。

「今度の本は『苦しみとの向き合い方』がテーマです。苦しみの克服の仕方でもなく、幸せの呼び込み方でもなく、苦しみとの向き合い方です。苦しみから逃げないで、正面から向き合ったとき、それが私たちを別の次元へと導いてくれるのです。状況は以前とまったく変わっていないのに、喜々として取り組んでいる自分がいるのです。

この本で紹介している大谷育子さんは、白血病で生死の境をさまよって奇跡的に生還し方です。大谷さんはその苦渋をバネにして、日本に骨髄バンクを立ち上げるに至りました。また、岡部明美さんは出産と同時に脳腫瘍が発見され、生死の境をさまよいました。回復した後、闘病中に目覚めたことが多くの人々を励ますようになりました。現在ではセミナーを開いて人々を大切な目覚めに導いておられます。この方々の経験はあなたへの応援歌かもしれませんね。きっと励まされますよ」

彼女に返事を書きながら、私は今度の本は彼女へのエールだったのかもしれないと思っていました。