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沈黙の響き (その3)

2020.7.16

 突然の閃光と雷鳴

 

病院での闘病生活は回復を待つ安穏な日々だけではありません。ちょっとしたことで気持ちを乱し、落ち込んだりしました。落ち込むと、悪い方へ悪い方へと邪推(じゃすい)してしまい、それにからめとられて八方ふさがりになってしまいます。

 

その日も深夜の病室の薄暗がりの中で、わたしは独り落ち込んでいました。

自分のような者に、今さら何ができるというのだ……。

結局なにも達成できないまま、人生の終わりを迎えるのではないか……。

そんな無力感にさいなまされていました。風雨が暗い窓ガラスを叩き、涙のように斜めに流れていきます。その向こうに町の明かりが点々と見えていました。

 

そのとき、突然閃光(せんこう)が走り、町が昼間のように明るくなった次の瞬間、ドーンという度肝を抜くような雷鳴が(とどろ)き渡りました。そしてその中からひそやかな声が聞こえてきました。

〈お前の負け犬のようなその考えはなんだ。

これほどまで丁寧にお前を導き、さまざまなことに気づかせ、苦境を乗り越えさせ、それを通して世の中に有用なメッセージを送ろうとしているのに、肝心なお前がへこんでいてどうするのだ!〉

 

再び稲妻が走り、風雨はますます激しさを増しています。再度雷鳴が鳴り、わたしの弱気も吹き飛ばされました。

 

〈人にはそれぞれ使命があるんだ! 考えられないような悲惨な人生を歩まされたとしても、それを乗り越えたとき、同じような境遇で意気消沈していた人々が勇気をもらい、それぞれの壁に再挑戦してゆける! そう思って、わたしはこれまでお前とともに歩いてきたのだ。ここで潰れてしまったら元も子もないぞ。

お前は〝選ばれし者〟だ。

耐えるのだ。続けるのだ。頑張るのだ。お前ひとりのためだけじゃない。同じような境遇にある者たちの代表として、結果を出すんだ!〉

 

わたしはただただ呆然として、薄暗がりのベッドの脇にたたずんでいました。その顔が稲光で時折り照らし出されます。

 

〈わたしが〝選ばれし者〟? 

そんなことがあり得るか? 

わたしに何の価値があるというんだ。

わたしは所詮(しょせん)、負け犬のような、取るに足りない人間だ――〉

再び稲妻が走り、天地が切り裂かれました。

 

〈お前は自分の力量ばかり心配している。自分の力量ではこの世の中に通用しないんじゃないかと思っている。だから不安なんだ。

 でも、それは違うぞ! 自分の力量に目を当てて一喜一憂するのではなく、〝大いなる存在(サムシング・グレート)〟に目を当て、それに用いられるよう、誠心誠意努力することが大切なんだ。

 小手先のことに心を労するな。宇宙の意志に寄り頼め。

力を落とすな、心貧しき者よ! 神の恵みはお前に満ちている。

 恐れるな! 神は針の穴でさえラクダを通すことができる。希望は神から来るのだ。

神を信頼して突き進め……〉

〈………〉

 わたしは稲妻に打たれて正気に返りました。

 

≪希望は神から来る!≫という宇宙の真理をもう一度反芻(はんすう)させられました。

神を信じる者はへこたれない。自分の力を信じるのではなく、神の計画を信じるのだ。

 その一夜はわたしを奮起させました。神が何かをなさろうとされている。だからここでわたしが(くじ)けてはいけない、と。