日別アーカイブ: 2022年10月15日

令和4年度第26回言志祭チラシ

「第26回言志祭~佐藤一斎まつり~」のご案内

10月29日に「第26回言志祭~佐藤一斎まつり~」が開催されます。

佐藤一斎生誕250年を記念して、第26回の「言志祭」が故郷の岐阜県岩村町で開かれます。佐藤一斎は幕末最大の儒学者で、江戸幕府唯一の大学、昌平坂学問所の儒官をやっていました。現在の大学総長に当たります。

彼が書き残した4冊の言志四録がベストセラーになり、日本文化の根幹を示しました。講演では、佐藤一斎が言志四録で指摘したことを意味するようなエピソードを紹介し、改めて日本文化の淵源を明らかにします。

令和4年度第26回言志祭チラシ


ペーボ博士と檀上和尚

沈黙の響き (その123)

「沈黙の響き(その123)」

今年のノーベル医学・生理学賞を受賞したペーボ博士は

檀上宗謙住職のお弟子さん

神渡良平

 

 

「沈黙の響き」はこのところ、エリザベス・サンダース・ホームの澤田美喜園長を採り上げて連載してきましたが、ここにビッグサプライズ・ニュースが届きました。今年のノーベル医学・生理学賞はスウェーデンのスバンテ・ペーボ博士に授与されることに決まったというニュースです。ペーボ博士は「沈黙の響き」(その87)で紹介した檀上宗謙(だんじょう・そうけん)西光禅寺住職に師事するお弟子さんでもあります。そこで今回はこのニュースに切り替えます。

 

スバンテ・ペーボ博士は絶滅した人類ネアンデルタール人のゲノム(遺伝情報)をその化石に含まれるDNAから解読し、古代のDNAを最先端のゲノム解析技術で読み解く新たな学問分野を開拓し、人類の進化史を書き替えた研究者です。

ペーボ博士はドイツの研究機関マックス・プランク進化人類学研究所教授で、現代人が免疫や新型コロナウイルスの重症化リスクなどに関わる遺伝子を、ネアンデルタール人から受け継いでいることも明らかにしました。そのため人類の免疫システムの新たな感染症への反応を調べることに大いに役立つと思われます。

古人類学の研究がノーベル医学・生理学賞を受賞するのは極めて異例ですが、ペーボ博士の研究成果は、新型コロナの重症化リスクの解明に関わることから、今年はペーボ博士に授与されることに決まったわけです。

 

◇檀上和尚と20年の交流

ところでペーボ博士は大の日本好きでもあります。かねがね坐禅に興味を持っていたペーボ博士は、25年ほど前、広島県福山市の神勝寺国際禅道場に坐禅に来られたとき、副住職だった檀上和尚出会って意気投合しました。檀上和尚が同県三次市の西光禅寺に移ると、檀上和尚のもとで坐禅をするようになりました。

平成25年(2013)年には西光禅寺に3か月滞在し、文藝春秋社から出版する予定の著書『ネアンデルタール人は私たちと交配した』を執筆していました。ペーボ博士は沖縄科学技術大学院大学の客員教授も務めており、先月上旬にも3日間、西光禅寺に滞在していました。

檀上和尚は先回のコラムでも伝えたように、英語が達者なこともあって、アメリカやオランダで毎年坐禅のリトリートを開催しており、東西の懸け橋になっています。今回のペーボ博士のノーベル賞受賞を通して、精神文化の交流点になっておられことがいっそうはっきりしました。

「ペーボ博士のノーベル賞の受賞が決まって、飛び上がるくらいうれしかった」

と、壇上和尚は参禅する人たちと相好を崩して喜びました。

「ペーボ博士は令和2年(2020)、日本科学技術国際賞(ジャパン・プライズ)を受賞し、授賞式には恥ずかしながら私も招待されました。日本科学技術国際賞とは、科学技術において、独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献した人物に対して贈られるノーベル賞級の賞です。

これは松下幸之助氏が私財約30億円を提供し、昭和60年(1985)、天皇陛下隣席の下、第1回の授与式が行われました。ペーボ博士はこの栄えある賞を3年前に贈られており、今回のノーベル賞受賞も早くから取りざたされていました」

スウェーデンで生れ育ち、ドイツで研究生活を続け、世界を股にかけて講演旅行するペーボ博士ですが、心は日本に居つかれたようです。

「ペーボ博士にとって西光禅寺は自分の心を休める場であり、自分を見つめる場でもあります。坐禅によって心のケアをし、研究への集中力をますます高めていただきたいと思っています。

ペーボ博士は精進料理が好きなので、これからも私の昔ながらの手料理を食べ、ご一緒に緑茶を飲んで、くつろいでいただきたいと願っております。いつも物静かなペーボ博士は、優しい心でどんな方々にも接せられ、研究内容についての質問も丁寧に話されます。何よりも毎朝の祈りの時間には般若心経を唱え、深い祈りの生活をされています」

 私たちの「沈黙の響き」欄もこうして檀上和尚やペーボ博士にご縁をいただいてとても感謝です。この秋、最大の朗報でした。今度は檀上和尚とペーボ博士を囲んで乾杯しましょう。

ペーボ博士と檀上和尚

ペーボ博士著書

西光禅寺でのペーボ博士

ぺーボ博士

瞑想するペーボ博士

写真=ペーボ博士と檀上和尚 ペーボ博士の著書『ネアンデルタール人は私たちと交配した』 抹茶を楽しむペーボ博士 仏壇の前で ⑤「日々の瞑想は欠かせません」とペーボ博士