中川さんのラジオ番組の収録

沈黙の響き (その11)

2020.9.12 ウィークリーメッセージ「沈黙の響き」(その11

「言葉は人格形成の中核だと気づきました」④

  中川千都子さんが闘病生活でつかんだもの

神渡良平

 

最後の手術のときに聞こえた声

その年は手術を5回くり返し、最後に手術をしたのがその年の12月でした。

その日、いつものように朝日の見えるところで、「ありがとうございます」と唱えて祈っていると、誰も周りに誰も人がいないのに、

「肉体は自分じゃない!」

という声が聞こえてきました。思いがけない声に驚き、その言葉を反芻(はんすう)していると、涙がブワッと込み上げてきました。

(そうか! 肉体は自分じゃないんだ。わたしの“いのち”はもっと大きく、永遠のものなんだ。何時間か後に大きな手術を受けるけれど、私が損なわれることはまったくないんだ。安心してゆだねたらいいんだな)

はっとした次の瞬間、まるで広い空に抱きかかえられたような味わったことのない大きな安堵感(あんどかん)に包まれました。だから中川さんはまったく不安がゼロの状態で手術を受けることができたのです。

 

中川さんはもともと論理思考で、不思議なものは信じないタイプでした。しかしこのような体験を通じて、神仏といった人知を超えた世界があると思うようになりました。

病室の天井を眺めながら、何度も手術を繰り返しては、こうしてまた生かされているわけを考えるようになりました。それまでは傲慢にも自分の力で生きていると思っていました。でも、間違いなくこの小さな自分を支え、守り、生かす大いなる力が存在する! そして次第に、この大きな力に恩返しをしなくてはと思うようになりました。

 

そこで一人でも多くの人に、自分の体験を踏まえて、

「人生は何があってもOKです。どんなところからでも立ち上がれるんです」

と伝えたいと、心理カウンセラーとして起業しました。幸いにも企業や個人に受け入れられてひっぱりだこになり、講演や講座などに忙しくなりました。それにラジオMBC松原インターネット放送で毎週木曜日午後1時から1時間、「中川千都子の“ありがとうのじかん”」を放送するようになり、関西圏のみなさんに楽しんでもらっています。そんな経験を経て、中川さんはつくづく思いました。

 

「私たちは間違いなく“サムシング・グレート”(大いなるもの)に生かされており、“天意を生きる”ことが一人ひとりの役目だと思います。真の幸せから外れて“我”を生きると、かつての私のようにしんどくなるんです。

天意を生きることの具体的な方法は“言葉を変える”ことです。常に心の中で“ありがとうございます”と唱えることで、天とつながりやすい自分でいることができます。“ありがとうございます”はすべての調和をもたらす祈りの言葉です」

 

 体験に裏打ちされた中川さんの言葉には説得力があります。それに、生き生きと輝いている中川さんの表情が、語られるメッセージを裏打ちしています。

 私は中川さんの話を聞いていて、つくづく「人間は強いなあ!」と思いました。人間はタフで、少々のことではへこたれません。どんな状況に陥っても必ず道を見つけだし、ついに“全体調和”に至り着きます。人間はもともと全体調和の世界の主人公だからです。

 

 自分を育てるのは自分自身です

もともと私たちは全体調和の世界に生きるようになっていました。そこへガイドしてくれる道が「魔法の言葉」なのです。何があろうとも、「ありがとう」と感謝することで、私たち自身とその周囲に次第に調和の世界が現れてきます。

 

私たちが住んでいる世の中が、誰かの力によって昇華して調和の世界に変わるのではありません。あなた自身の努力でまずあなたの中に調和の世界が顕現し、それが次第に周囲に広がっていくのです。だからそういう世界が顕現するかどうかは、一重に私たち自身の努力に掛かっているのです。“自分を育てるのは自分自身である”という真理は今も昔も変わりません。

 

※写真はラジオ番組収録中の中川千都子さんとアシスタントの樋口真奈美さん

 

(中川さんについての連載は今回で終わります。次回からは「鉄筆の聖者」といわれた熊本の教育者・徳永康起先生についてです)