神の啓示

沈黙の響き (その108)

「沈黙の響き(その108)」

祈りの日々……そして受けた神の召命

神渡良平

 

 

イギリスでの勤務を終えて帰国する夫に随って、澤田美喜さんも東京に帰ってきました。しかし、医師のバナードス先生が孤児院を開いて孤児たちを献身的に養育されている姿が忘れられません。バナードス・ホームは広々とした施設は豊かな森に囲まれており、そこがまさか孤児院だとは思えないような環境です。ホームは先生の穏やかな人柄によっていっそう落ち着いて見えました。

 

(私もこんな事業に助力したい……)

澤田さんは帰国すると、3日間黙想の日を送りました。

(地上において生活する日々が、もし誰かの人助けになるとしたら、これほど有意義なことはない。外交官夫人として国家の運命に関わることも重要なことですが、目の前に捨てられた子どもがいれば、見て見ぬふりをすることができません……)

 

そしてさらに1週間、神に問いたずねました。

 

(この事業はその人の人生に関わる仕事ですから、一度やり始めたらもうあとには引けません。混血児たちの養育は片手間でできることではなく、献身的にやらなければ本当の手助けはできまません……。

夫を支える外交官夫人の仕事もフルタイムの仕事です。ああ、一体私はどうしたらいいのでしょうか……)

 

 自分みたいな者にやれるだろうかと不安も消えません。あるときバナードス先生は助言してくださり、同情心だけでは挫折すると言われました。だからこそ“信念”が必要です。神に裏打ちされて“力強く”されなければ、とてもこの事業は成功しないように思われます。

 

(ああ、主よ、どうぞ私を強い女にしてください。ひとりのか弱い女ではなく、主と共にある戦士にしてください……)

来る日も来る日も祈りのときが続きました。そして次第に、

「これは主から私に託された使命だ!」

と確信するようになり、もはや揺るがないようになりました。はっきり「神からの召命された」と感じ取ったのです。

 

澤田さんはすでに子育ては終わっていたので、夫に了承してもらい、混血孤児院の園長として、運営に専念したいと思いました。管理運営する施設の理事長としてではなく、実質的に子育てに汗をかく
“園長”としてです。

 

英語では「召命」のことを Devine Calling 、「神さまから呼ばれた」と表現します。主体は神さまで、自分は神さまに呼ばれて地上でその役目を果たすのだと考えです。澤田さんは神さまからいただいた新使命として、残る余生を戦争孤児たちの養育に捧げる決心をしました。

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