神渡先生へ
暖冬とはいえ、やはり寒いウラジオストクよりM.S.でございます。
先日、日本より届いた「許されて生きる」を拝読させていただきました。
仕事と個人的関心から満州関連にかかわることも増えており、またウラジオストクに住んでいると日本国内とは違って深く、多方面に感じることがあり、感想が短くなりませんでした。
ロシア語に翻訳して仲間に見せてあげたいくらい素晴らしい本で、日本の書籍が手に入らないウラジオストクで繰り返し読まさせていただきます。
とりあえず1回目拝読した感想を添付させていただきます。
先生が死ぬまでに書きたいとおっしゃられていたように、そんな思いが詰まった本でした。ありがとうございます!
(以下、感想)
許されて生きるを拝読しまして
小職は大学時代を妙心寺近くの京都で過ごし、教会に通わせて頂いたりもし、また20代は韓国人の上司のもとで4-5年、その後は上海、今ウラジオストクで4年過ごし、仕事として沿海州および満州エリアの日本人居留民史にかかわっているので、深く感じるところが多々ございました。
まず驚いたのが5ページにあった坂村真民さんの「鈍い刀が光る」の詩です。この詩は神渡先生の「自分の花を咲かせよう」から1つだけピックアップして哲学や文化を学習するロシア人グループにロシア語翻訳して披露しとても感動してもらった詩であったからです。このグループは1950年くらいから世界中に展開しているので少なくともモスクワの会員は知っています。小職がロシア語にし読んだ(モスクワの先生の誕生日プレゼント)唯一の詩でしたので、個人的にびっくりしました。
また50ページあたりから天香さんや倉田百三さんにトルストイ「我宗教」が大きく影響を与えたというのも初めて知り、全編において残虐行為を働いたとされるロシア人とロシアですが、多分に日本や日本人と近い価値観を有する部分もあることを再認識しました(残虐行為に従事したロシア人はロシア人のごく一部でその質の悪い犯罪者みたいなのが極東、サハリンに向けられたというのが実態のようです。今もその残党の雰囲気は軍人ではなく警察に感じます)早速哲学の先生に、トルストイが天香さん、武者小路実篤などを感化したことを聞いてみると、トルストイの人生自体が道の探求であったので、そのような探求者には影響を与えたかもしれないとのことでした。ただ日本の宗教者や文学者が感化を受けたのはロシア人の先生も知らないようでした。1930年のトルスタヤ女史と天香さんの出会い、京都での講演もロシア人に伝えたいと思いました。
1914年の第一次大戦後の国際連盟が上からの平和組織で、それとは違う視点で利他の心で個人の生活から争いをなくし下から平和を積み上げていくという天香さんの考えと実践は現代にも通じると感じました。
鐘紡の社員食堂の箇所を通じ感じたのは、日本の誇れるところは食べ物に感謝し、誰でも普通に掃除できるということでした。ロシアの小学校では、給食の時間でも10分くらいで掻っ込むような感じで、生産者や自然、生き物に言及することはありません。一緒に行った元小学校校長もおっしゃっていましたが、日本の学校では
給食を通じて農業や命を教えるらしいのです。また掃除は学校から会社まで、自宅以外は掃除専門員がそれを行います。子供たちも基本的に掃除をしません。小職は全く人に言えるような掃除好きでもありませんが、一般の日本人として掃除させられ育っているので、今思うとこれはとてもいい教育だと思いました。この2点は少なくともロシアが学ぶといい点ですし、ロシアの小学校先生もそれは認めています。
174ページに鐘紡の女工は文明病にかかっていない田舎娘という記載がありましたが、今でいうと北朝鮮の一般庶民からはこの部分があるような感じがし、日本人が学べる点があると個人的に思っています。
184ページの「そんなに丁寧に扱ってもらえたら、ごみ箱もうれしいでしょうね」というところですが、物にも魂が宿るような話はルンペンでなくても、大量消費の現代こそ重要な考えだなと思いました。小職も自分の生活を顧みた次第です。
217ページのカリフォルニアでの講演で「日本人にもいい人もあれば、よからぬ人もあります。・・・罪を分かち合うことです」の部分からは、加害者となった日本と被害者の旧満州、朝鮮半島、加害者となったロシアと被害者の日本の間のわだかまりを解いていくうえでも必要だと改めて感じました。100年前に天香さんがおっしゃったことですが、今こそ必要かなと思います。国家は無責任に利害を主張しあいますが、それに一般人はまどわされることなく、天香さんのようにどの国の人に対しても懺悔して下座に生きるような対応をし合えば、いい種が広がっていく気がします。日本国も戦後、日本に命、力をささげた国民を護ることはなかったので、やはり国家間のことには惑わされないようにしたいとおもいます。
294ページにある「人間は金儲けのために働かなくても、他のもために捧げて奉仕してゆけば、求めなくても必要なものは与えられる。そしてそこから世の中のあらゆる問題が解消し争いのないは平和な生活が得られる」「自分の至らないところを徹底的にお詫びし、すべてを捨てきる無所有の生活」これは現在の小職ではまったく実践できておりませんが、1つの指針として非常に感銘をうけました。
244ページの「月の光が水面で反射し・・・」の光、夜空、月、地平線の部分が、光(自分を超えた大自然、宇宙)のような存在を感じられる記述で、心が洗われました。宇宙のような視点から、人間の生活も常に眺めることができればいいだろうなと思い、そういう視点をもって小職も生きていければと思いました。
406ページの方角を示す北極星の部分は、本当におっしゃる通りだとおもいました。ロシア人が日本を尊敬するのも、他のアジア人が尊敬するのも、欧米人が尊敬するのも、日本が高貴だからだと思います。パラダイムシフトが起きている今こそ、目には見えない、でも外国が評価するこのような日本、日本人の部分を日本人として認識し、伝え、各人の生活で意識していければなぁと思います。
PS:
今回のご著書を読むのに補足的に役立った知識は、満州の事情と、満人、シナ人の使い分けの事情でした。
若い人の中には、ちょっとこの部分がわかりにくく、読みにくくなってしまうかもと思われました。
また「懺悔」の意味やなぜ「無所有」かなどは、一燈園さんのHPでわかりやすく説明されてあり、読むための助けになりました。
https://www.ittoen.or.jp